都市と地方で広がる情報格差：観光資源より「伝え方」が集客を左右する時代

訪日客は戻った。しかし、地方には届いていない

2024年、訪日外国人旅行者数はコロナ前の水準を超え、3000万人を突破する勢いです。日本政府観光局（JNTO）のデータによれば、東京、大阪、京都といった主要都市部では外国人観光客の姿が街にあふれ、ホテルの稼働率も高水準を維持しています。

一方で、地方部の状況は大きく異なります。確かに訪日客総数は回復していますが、その多くは依然として「ゴールデンルート」（東京-富士山-京都-大阪）に集中しており、地方への分散は十分に進んでいません。

観光庁の調査によれば、外国人旅行者の約70%がこのゴールデンルート沿いの都市部に集中し、地方部への訪問率は依然として低いままです。地方には美しい自然、歴史的建造物、独自の文化体験、美味しい郷土料理など、魅力的な観光資源が豊富にあるにもかかわらず、です。

なぜ、地方は選ばれないのか？その答えは、観光資源の質や量ではありません。「情報の伝え方」と「届け方」の格差にあるのです。

地方が抱える「情報発信」の3つの課題

【課題1】多言語対応の不十分さ ― 外国人に「見つけてもらえない」

地方の観光情報サイトの多くは、日本語のみ、あるいは英語のみの対応にとどまっています。しかし、訪日外国人の国籍は多様化しており、中国、韓国、台湾、香港、タイ、シンガポール、欧米各国など、それぞれの言語でアクセスできる情報が求められています。

例えば、中国のSNS「小紅書（RED）」やタイの旅行プラットフォームでは、母国語で書かれた観光情報が旅行先選定の重要な判断材料となります。しかし、地方の観光地が多言語で情報発信できていなければ、そもそも検討候補にすら入らないのです。

【課題2】情報発信のリソース不足 ― 人材とコストの壁

都市部の観光協会や大手観光施設には、専門のマーケティング担当者や多言語対応スタッフがいます。一方、地方の小規模な観光協会や個別事業者は、通常業務に追われ、情報発信にまで手が回らないのが実情です。

さらに、多言語でのコンテンツ制作には翻訳費用や専門人材の確保が必要で、予算の限られた地方にとっては大きな負担となります。結果として、「やりたいけどできない」という状況が続いています。

【課題3】デジタルマーケティングの遅れ ― SNS・SEO対策の不足

現代の旅行者は、Google検索、Instagram、TikTok、YouTube、Trip Advisorなど、デジタルプラットフォームで情報収集を行います。しかし、地方の観光情報はこれらのプラットフォーム上でほとんど露出されていないケースが少なくありません。

例えば、Googleで「Hidden gems in Japan」（日本の隠れた名所）と英語検索しても、地方の観光地が上位に表示されることは稀です。SEO対策や多言語コンテンツの充実がなければ、どれだけ素晴らしい観光資源があっても、外国人の目には触れないのです。

「情報格差」が生む悪循環のメカニズム

情報発信が不十分な地方では、以下のような負のスパイラルが生じています。

一方、都市部は既に認知度が高く、SNSでの露出も多いため、情報発信をしなくても観光客が集まる正のスパイラルが働きます。これが、都市と地方の集客力格差をさらに広げているのです。

「伝え方」が変われば、地方の魅力は世界に届く

しかし、この状況は決して打開できないものではありません。実際、情報発信の方法を工夫することで、地方でも外国人観光客を大きく増やした成功事例が数多く存在します。

成功事例1：飛騨高山 ― SNSとインフルエンサー活用

岐阜県の飛騨高山は、古い町並みと温泉が魅力の地方都市です。かつては外国人観光客はほとんどいませんでしたが、海外の旅行ブロガーやYouTuberが「日本の隠れた宝石」として紹介したことをきっかけに、英語圏の旅行者が急増しました。

さらに、地域の観光協会が英語、中国語、タイ語などで公式サイトやSNSを運用し、リアルタイムで情報発信を続けた結果、外国人宿泊者数は10年で約10倍に増加しました。

成功事例2：香川県・直島 ― アートという「言語」を超えた訴求

瀬戸内海の小さな島・直島は、現代アートの聖地として世界的に知られるようになりました。アート作品そのものが「言語を超えたコミュニケーション手段」となり、多言語での詳細な解説がなくても、視覚的な魅力だけで外国人を惹きつけることに成功しました。

加えて、美術館やギャラリーが多言語パンフレットやウェブサイトを充実させたことで、外国人アート愛好家の間で口コミが広がり、年間40万人以上が訪れる観光地となりました。

成功事例3：北海道・ニセコ ― 徹底した英語対応とデジタル情報発信

ニセコは、パウダースノーを求めるオーストラリア人スキーヤーをターゲットに、徹底した英語対応を実施しました。宿泊施設、飲食店、スキー場のスタッフが英語で対応できる環境を整え、公式サイトも英語を主言語として設計。

結果、オーストラリアの旅行サイトやSNSで「世界最高の雪質が体験できる場所」として拡散され、今では外国人観光客が地域経済を支える重要な柱となっています。

地方が今すぐできる「低コスト×高効果」の情報発信戦略

「そうは言っても、うちには予算も人材もない」――多くの地方事業者・自治体がそう感じるでしょう。しかし、高額な広告費や専門スタッフを雇わなくても、効果的な情報発信は可能です。

戦略1：「QRコード × 多言語AI音声動画」で、現地の情報を世界へ

おもてなしQRメーカーを活用すれば、以下のような情報発信が5分で実現できます。

• 観光スポットの魅力紹介：歴史、見どころ、おすすめの時間帯を15言語で音声・字幕付き動画として提供
• アクセス方法の詳細案内：最寄り駅からのバス・タクシー情報、所要時間、運賃を多言語で説明
• 体験プログラムの事前案内：陶芸体験、農業体験、郷土料理教室などの内容と予約方法を動画で紹介
• 地域の食・特産品紹介：地元レストランのメニュー、食べ方、アレルギー情報を多言語対応
• 季節イベント情報：祭り、花火大会、紅葉スポットなど、タイムリーな情報を即座に更新

QRコードを現地の看板、パンフレット、観光案内所、宿泊施設に設置すれば、訪れた外国人観光客がスマホをかざすだけで、必要な情報を母国語で得られます。さらに、これらのコンテンツはSNSでシェアされやすく、口コミでの拡散効果も期待できます。

戦略2：SNSでの「リアルタイム情報発信」を習慣化

Instagram、Facebook、Twitter（X）、TikTokなど、無料で使えるSNSを活用し、以下のような情報を発信しましょう。

• 今日の天気と観光地の様子（写真・動画）
• 季節限定の見どころ（桜、紅葉、雪景色など）
• 地元の人しか知らない隠れスポット
• 体験プログラムの参加者の笑顔（許可を得て）
• 地元食材を使った料理の紹介

英語、中国語など、ターゲットとする言語でハッシュタグを付けて投稿すれば、世界中の旅行者の目に触れる可能性が高まります。

戦略3：旅行プラットフォームへの登録と口コミ促進

Google My Business、TripAdvisor、Booking.com、Airbnbなど、外国人がよく使う旅行プラットフォームに施設情報を登録しましょう。特にGoogle My Businessは無料で利用でき、Google検索やGoogleマップに表示されるため、SEO効果も抜群です。

また、訪問した外国人観光客に「ぜひレビューを書いてください」と依頼することも重要です。高評価の口コミが増えれば、次の旅行者が安心して訪れる好循環が生まれます。

戦略4：地域内での情報発信の連携

個別事業者だけで情報発信するよりも、地域全体で連携する方が効果的です。DMOや観光協会が中心となり、以下のような取り組みを推進しましょう。

• 地域統一のQRコードデザイン・フォーマット
• 共通の多言語マップ・パンフレット
• 地域公式SNSアカウントでの統一情報発信
• 近隣自治体との広域連携プロモーション

おもてなしQRメーカーが地方の「伝え方」を変える5つの理由

地方観光の未来は「情報の民主化」にかかっている

都市と地方の観光格差は、観光資源の差ではなく、情報の届け方の差です。そして、この情報格差は、デジタル技術の活用によって確実に縮めることができます。

特に、「多言語AI音声動画 × QRコード」の組み合わせは、地方の小規模事業者や自治体でも無理なく導入でき、かつ即効性のある解決策です。

地方には、都市にはない「本物の日本」があります。手つかずの自然、伝統的な暮らし、心温まるおもてなし。それらを求めて日本を訪れる外国人は確実に増えています。

その魅力を、正しく、分かりやすく、届けやすい形で発信すること。それこそが、地方観光の未来を切り拓く鍵なのです。

まとめ：地方観光復活のカギは「伝え方改革」

訪日外国人が増えても、地方に恩恵が届かないのは、観光資源の問題ではなく、情報発信の問題です。多言語対応、デジタルマーケティング、リアルタイム更新――これらを低コストで実現する手段が、今はあります。

「予算がない」「人がいない」と諦める前に、まずは1つのQRコードから始めてみませんか？それが、あなたの地域を世界に開く第一歩になるはずです。