DMOの『司令塔』機能はどこまで機能している？人材・財源・DX課題と観光地域経営

DMOとは何か？ 地域観光を変革する「司令塔」としての役割

DMO（Destination Management/Marketing Organization：観光地域づくり法人）は、地域の「稼ぐ力」を引き出すために、多様な関係者と協同しながら観光地域づくりを推進する法人です。観光庁の制度として2015年に本格始動し、2024年現在、全国で約200のDMOが登録されています。

DMOの主な役割は以下の通りです。

• 地域のマーケティング戦略策定：データに基づき、ターゲット市場や訴求ポイントを明確化
• プロモーション活動：国内外への情報発信、メディア対応、旅行商品造成支援
• 受入環境整備：多言語対応、Wi-Fi整備、観光案内所運営、二次交通改善
• 地域資源の磨き上げ：体験プログラム開発、特産品ブランディング
• 関係者間の調整・連携促進：自治体、事業者、住民をつなぐハブ機能
• データ収集・分析：来訪者数、消費額、満足度などの把握と改善策提案

つまり、DMOは地域観光のあらゆる側面を戦略的にマネジメントする「司令塔」として期待されているのです。

理想と現実のギャップ。DMOが直面する3つの深刻な課題

しかし、多くのDMOは理想的な機能を十分に果たせていないのが実情です。国土交通省や訪日ラボの調査によれば、以下の3つが特に深刻な課題として挙げられています。

【課題1】人材確保の壁 ― 専門性を持つ人材が集まらない

DMOには、マーケティング、データ分析、デジタル戦略、多言語対応、プロジェクトマネジメントなど、高度な専門スキルが求められます。しかし、地方では以下の理由から人材確保が極めて困難です。

• 給与水準の低さ：自治体からの補助金や会費に依存する財務構造のため、民間企業並みの待遇を提示できない
• キャリアパスの不透明さ：組織規模が小さく、昇進やスキルアップの機会が限られる
• 地理的制約：都市部の優秀な人材を地方に呼び込むのが難しい
• 短期雇用の不安定さ：補助金の年度単位での見直しにより、雇用継続が不透明

結果として、自治体職員の出向や観光協会からの兼任といった「片手間体制」になりがちで、専門的・戦略的な活動が困難になっています。

【課題2】予算・財源の制約 ― 自立経営への道は険しい

DMOの財源は主に以下の3つです。

1. 自治体からの補助金・委託費：最も大きな収入源だが、年度ごとの見直しで不安定
2. 会費収入：地域事業者からの会費。ただし小規模事業者が多い地域では負担が重い
3. 自主事業収入：物販、ツアー企画、広告収入など。まだ収益化できているDMOは少数

観光庁は「将来的には自主財源比率50%以上」を目標に掲げていますが、実際には多くのDMOが補助金依存から脱却できていません。予算不足により、以下のような問題が生じています。

• 優秀な人材を雇えない
• 大規模なプロモーションを実施できない
• DXツールの導入費用が捻出できない
• イベントや体験プログラムの開発が進まない

【課題3】マーケティング・DXの遅れ ― データ活用が進まない

DMOの強みは「データドリブン経営」であるはずですが、現実には以下の問題が顕著です。

• データ収集基盤の欠如：来訪者数、消費額、満足度などの基礎データすら把握できていない
• 分析スキルの不足：データはあっても、それを戦略に落とし込める人材がいない
• デジタルツールの未導入：CRM、MAツール、BI（ビジネスインテリジェンス）ツールなどの活用が遅れている
• 多言語対応の不十分さ：ウェブサイトやSNSの多言語化が進まず、インバウンドへの訴求力が弱い

結果、「勘と経験」に頼った施策が続き、費用対効果の検証や継続的改善ができないという悪循環に陥っています。

DMOが機能しないとどうなるか？ 地域観光に与える深刻な影響

1. 地域誘客が停滞する

DMOが戦略的なマーケティングを行えないと、他の競合観光地との差別化ができず、誘客力が低下します。特にインバウンド市場では、海外OTAやSNSでの露出が重要ですが、それらを戦略的に活用できる組織がなければ、認知度向上は困難です。

2. インバウンド対応が遅れる

多言語案内、キャッシュレス決済、Wi-Fi環境など、インバウンド受入に必要なインフラ整備が進みません。個々の事業者が単独で対応しようとしても、統一感のないバラバラな施策になり、外国人観光客の満足度が上がりません。

3. 地域事業者間の連携が弱まる

DMOがハブ機能を果たさなければ、宿泊施設、飲食店、観光施設、交通事業者などが個別に活動し、地域全体としての魅力が発揮されません。地域内での情報共有や共同プロモーションも停滞します。

4. 観光消費額が伸び悩む

単なる「通過型観光」にとどまり、宿泊や体験プログラムへの誘導ができず、地域全体での観光消費額が増えません。地域経済への波及効果も限定的です。

5. 住民理解が得られず、オーバーツーリズムの火種に

DMOが地域住民とのコミュニケーションを怠ると、観光客増加による負の側面（騒音、混雑、マナー問題）への不満が高まり、観光振興への協力が得られなくなります。

事業者とDMOが協働するための3つのポイント

DMOが抱える課題は深刻ですが、だからといって「DMOは役に立たない」と距離を置くのは得策ではありません。地域観光を持続的に発展させるには、事業者側からも積極的に関わることが重要です。

【ポイント1】「声をあげる」― 現場の課題を共有する

DMOは地域全体を見渡す立場にありますが、個々の現場の課題まで把握しきれていないこともあります。事業者は以下のような形で積極的に情報提供しましょう。

• 定例会議や分科会に参加し、現場の困りごとを共有
• インバウンド対応での具体的な問題点（言葉の壁、決済トラブルなど）を報告
• 観光客からのフィードバックやクレーム内容を伝える
• 成功事例や工夫した取り組みもシェアし、他事業者にも展開

DMOが「何をすべきか」を知るためには、現場の生の声が不可欠です。

【ポイント2】「データ共有」― 事業者も情報提供者になる

DMOのマーケティング・分析機能を強化するには、地域全体でのデータ収集が必要です。事業者ができることとして、以下が挙げられます。

• 来店・来訪者数の共有：月次や四半期ごとに、DMOへデータ提供
• 顧客属性の共有：どの国・地域からの観光客が多いか、年齢層、性別など（個人情報には配慮）
• 消費額の傾向：客単価、人気商品、売れ筋時期などの情報
• アンケート協力：観光客満足度調査への協力

これらのデータが集約されることで、DMOは精度の高い戦略を立てられるようになり、結果的に地域全体の集客力向上につながります。

【ポイント3】「多言語・AI活用」― 個別対応の限界を技術で超える

人材不足・予算制約の中で、すべての事業者が多言語スタッフを雇うのは現実的ではありません。ここで有効なのが、低コストで導入できるデジタルツールの活用です。

特に、「多言語AI音声動画×QRコード」は、以下の理由で中小事業者に最適です。

• 低コスト：動画1分30円の従量課金制で15言語に対応可能
• 導入の手軽さ：専門知識不要、5分で作成・設置可能
• 更新の容易さ：情報変更時も即座に反映、印刷物の刷り直し不要
• 非接触対応：スタッフの負担を減らしつつ、情報提供の質を向上
• 標準化と統一感：地域内で統一フォーマットを採用すれば、観光客の利便性向上

DMOと事業者の協働で実現する「多言語AI音声動画」の活用シーン

シーン1：DMO主導での地域統一QRコード戦略

実施内容：

• DMOが「おもてなしQRメーカー」のアカウントを一括契約
• 地域内の宿泊施設、飲食店、観光施設に無償または低価格で提供
• 統一デザインのQRコードステッカーを配布し、ブランドイメージを統一
• 各施設ごとにカスタマイズされた多言語案内コンテンツを作成

メリット：

• 地域全体での受入環境が一気に向上
• 個別事業者のコスト負担を軽減
• 外国人観光客にとって「この地域はどこでも情報が得やすい」という好印象

シーン2：観光案内所・交通拠点での多言語案内

設置場所：駅、バスターミナル、観光案内所、主要観光スポット

提供情報：

• 周辺マップと見どころ紹介（音声ガイド付き）
• 公共交通の乗り方、ルート案内
• おすすめモデルコース
• イベント情報（リアルタイム更新）
• 緊急連絡先、医療機関情報

シーン3：体験プログラム・ツアーの事前案内

活用方法：

• ツアー予約確認メールにQRコードを添付
• 集合場所、持ち物、注意事項を多言語で事前案内
• 当日の流れを動画で説明し、参加者の不安を解消

効果：

• 当日のトラブル・遅刻を減らし、スムーズな運営
• ガイドが説明に割く時間を削減し、体験そのものに集中できる

シーン4：地域全体でのマナー啓発

設置場所：温泉施設、神社仏閣、自然保護区、住宅地周辺

提供情報：

• 温泉の入り方、神社での参拝マナー
• 写真撮影禁止エリアの説明（理由も添えて）
• ゴミの分別方法、騒音への配慮のお願い

効果：

• 観光客の理解と協力を得やすくなり、地域住民とのトラブル減少
• オーバーツーリズムによる負の影響を緩和

成功事例：DMOと事業者が連携した地域の変革

今後のDMOに求められること ― 「司令塔」から「共創プラットフォーム」へ

DMOの課題は深刻ですが、それでもなお、地域観光のハブとしての役割は不可欠です。今後、DMOがさらに機能するためには、以下の方向性が重要です。

1. 人材育成とリモートワーク活用

地方にいながらでも都市部の専門人材と協働できるリモートワーク体制を整備。フリーランスの専門家を活用し、柔軟な組織運営を目指す。

2. 自主財源の多様化

体験プログラムの商品化、地域商品のECサイト運営、ふるさと納税の活用など、収益化できる事業を積極的に展開。

3. DXツールの積極導入

低コストで導入できるクラウドツール、AIツールを活用し、少人数でも高度なマーケティング・データ分析を実現。

4. 事業者・住民との対話強化

定期的な意見交換会、ワークショップを開催し、DMOが「上から指示する組織」ではなく、「みんなで作る地域のプラットフォーム」になることが重要。

まとめ：DMOと事業者の「共創」が、地域観光の未来を切り拓く

DMOは万能ではありません。人材不足、予算制約、DXの遅れといった課題を抱えています。しかし、だからこそ、事業者側からの積極的な関与が必要なのです。

「声をあげる」「データを共有する」「多言語・AIツールを活用する」。これらの小さな一歩が積み重なれば、地域全体の観光力は確実に向上します。

特に、多言語AI音声動画×QRコードのような低コスト・高効果のツールを地域全体で導入することは、DMOと事業者の協働による最も現実的で効果的な施策の一つです。

「どこを起点に変えたらいいか分からない」と感じている地域・事業者の皆様。まずはDMOとの対話から始めてみませんか？そして、具体的なツールとして「おもてなしQRメーカー」を導入し、地域全体での受入環境改善の第一歩を踏み出しましょう。